ピットフォール その6
日常的な設例を検討します。例えば、レジで4千円を支払うべきときに、まちがえて千円札3枚と5千円札1枚を出してしまい、店員から間違ったお札が入っていると指摘されたとします。つまり、お札4枚を「千円札4枚」と思い込んでいた、という想定です。
この「思い込み」を検証するとすれば、次の各段階を踏む必要があると思います。
1 思い込みの発生理由を正当化しない。
「千円札と5千円札は大きさも色も似ているから間違えるのはしょうがない」と正当化してはなりません。思い込みに気がついたときに、最初に作用するのは正当化の心理です。誰でも自分の愚かなミスを認めたくはないからです。しかし、正当化をしている間は、決してその予防法はみつかりません。お札の色や形のせいではなく、それは思い込みによる事故であったと捉えることが必要です。
2 発生のプロセスを具体的にたどり直す。
「財布を出す」「お札を取り出す」「そのまま店員に渡す」「店員に間違いを指摘される」と、ステップごとに分解して整序します。
3 脱出の手順を作る。
上記のステップのうち、思い込みから脱出するチャンスはどこにあったと見るべきでしょうか。まず最初のチャンスはお札を取り出したときです。次にそれを店員に渡したときです。この二つのステップで確認をしていれば、そこに5千円札が混ざっていることに気がつくことができたはずです。そうすると、手順としてはお札を出すときに確認する、という脱出方法が考えられます。次に店員に渡すときにまとめて渡さずに一枚一枚分けて渡す、という脱出方法も考えられます。このようにして脱出の手順を行動パターンにしておきます。
今後は、たとえ再び思い込みが起きたとしても、上記手順を守っている限りすくなくとも脱出のチャンスが2回与えられることになります。