被後見人との利益相反 その1
登記実務誌「登記研究」781号145頁の記事で、成年後見人と被後見人の利益相反について解説がされています。
成年後見監督人が選任されていない場合において、被後見人所有の不動産を後見人が代表取締役を務める株式会社に売却し、その所有権移転登記を申請するときは、特別代理人の選任審判があったことを証する情報等の提供が必要である、という内容です。要するに利益相反に該当するということです。
これと比較して、未成年者所有不動産について、親権者が代表取締役を務める会社を債務者とする抵当権設定契約を親権者が行なう場合は、登記実務上利益相反と取扱われないという先例があります(昭和36年5月10日民甲1042)。また、未成年者と親権者の共有不動産について親権者が代表取締役を務める株式会社に売却する行為は利益相反に該当しないという質疑応答もあります(登研519-187)。これらは親権者と親権者が代表取締役を務める会社は法律上別人格であること、利益を受けるのは親権者ではなく会社であること、という判断にもとづいています。また、そのように解することが民法826条1項にいう「親権を行う父又は母とその子」という当事者の範囲の文理解釈に適うものと思われます。
しかし、成年後見人と被後見人については同じような判断はできない、とするのが今回の質疑応答です。その理由として、後見監督人の職務を定めた民法851条4号があるから、という説明がされています。