手続の可否と不利益の有無
手続ができるかどうかということと、不利益があるかどうかということは別問題です。が、裁判手続の場合、しばしばそれが混同されて質問されます。つまり、「こういう手続はできますか」という質問は文字通りの意味ではなく、「こういう手続をしても私には不利益はありませんか」という意味であることが多い、ということです。不利益とは、経済的な損失のリスクや法律上の制約、精神的負担や人間関係への影響など、さまざまです。
うっかり「手続の要件を満たせばできます」と答えると、「その手続をとってもあなたには不利益はありません」という意味で受け取られる危険性があります。したがって、「手続の要件を満たせばできます。しかし、その手続にはこのような不利益が想定されます」と補足することになります。
そうすると「じゃあ、その手続はできないんですね」という反応が返ってくることがあります。こういう方の場合、できるできないと不利益の有無が観念的に強固に接着しているようです。つまり、その人にとっては「不利益がある」とは「不可能である」ことを意味している、ということです。こういう場合には、いつも以上に粘り強く説明する必要があります。