競争原理と協力原理
アドラー心理学の用語には「競争原理と協力原理」という言い方があるようです。
自分なりに理解した内容のメモです。
人間関係を競争で律することがその組織の最善のパフォーマンスを引き出し、結果として組織全員に利益をもたらす、という考え方を競争原理とします。一方、組織の構成員に対し、共通の利益や便益実現に向かってそれぞれが協力することを求める協力原理という考え方があるとします。
競争原理だけで組織論を考えると、その組織に属する構成員はつねに競争にさらされることとなります。原理的に、全員がいつまでも勝ち続けることはできませんから、これは、大多数の敗者と少数の勝者を生み出し続けるシステムといえます。競争原理しか知らない人は、この組織からの脱落や退場を、人格や個性の否定と捉えることがあるかもしれません。
しかし、協力原理という別の関係論を知っていれば、それは人格や個性とは関係のない、ある一定のルールに基づいた競争の勝敗に過ぎない、と理解することができます。出世競争に負けても、それが人生の終わりではないと知っている、ということです。もっとも、競争の勝者はそれを敗北主義と呼ぶかもしれませんが。
協力原理の優れた効能は、競争原理を唯一絶対のものではなく、ひとつの価値観に過ぎない、と相対化することを可能にする点にあるように思います。
サッカーの話で考えてみると、トルシエ監督以降のサッカー日本代表の組織論は、大づかみに言ってしまえばチーム内競争やポジション争いを奨励する競争原理が優先されてきたように思われます。オリンピックチームを任された山本監督や反町監督には、とくにこの考え方が強かったような印象です。しかし、南アフリカ大会の経験を経て、現在の代表の組織論は協力原理を基調とする考え方に代わってきたようです。かつての代表選手は「ピッチに立てるように頑張る」ということをよくインタビューで答えていましたが、アジア大会では、「チームの団結」を口にする選手のほうが多かったように思います。