司法書士田島掌のブログ

2010年08月30日

会社法105条2項と108条1項1号、同2号の関係

ある掲示板で会社法105条2項の反対解釈の可否と108条1項1号、同2号の関係に関する議論を読み、自分なりにまとめ直してみました。

会社法105条2項が、株主に剰余金の配当を受ける権利「及び」残余財産の分配を受ける権利の全部を与えないとする定款の定めの効力を否定しているところ、では、その反対解釈による定款の定めはどのようなものが可能か、という議論です。具体的に言えば、剰余金の配当を受ける権利「または」残余財産の分配を受ける権利のいずれかを与えないとする定款の定めは、どのようなものであれば許されるのか、ということです。

例として、剰余金の配当を一切認めないとする定款の定めについて検討してみると、ある説では、このような定款の定めは108条1項1号の種類株式としてのみ許されると考えられています。すなわち、

  このような取扱いを定款に定めるには、種類株式によるしかない。なぜなら、
  株主の権利を定款で制限することは、法の明文の規定がない限り許されな
  いからであって、この場合は108条1項各号を根拠とするほかないから

という考え方です。実務書「論点解説 新・会社法 -千問の道標-」のQ77では、このような立場の解説がされています。

これに対して別の説では、種類株式によらなくても、単に定款に「当会社は剰余金の配当を行わない」と定めればよい、と考えられています。105条2項の反対解釈にもとづく定款の定めは法の明文の規定を根拠としなくともよい、という考え方です。

  剰余金の配当を受ける権利と残余財産の分配を受ける権利という二つ
  の権利の両方を株主から奪ってはならないとする105条2項は、両方を
  剥奪すると株式会社の本質である営利性が損なわれるから、これを禁
  ずる趣旨である。その反対解釈にもとづく定款の定めは、株式会社の
  営利性が損なわれない限り許容される。その解釈をするにあたっては、
  種類株式の方法だけによるべきとする根拠はない

という考え方のようです。

なお、いずれの説からも株主間契約による権利の制限は肯定されます。

商事法務「論点解説 新・会社法 -千問の道標-」
http://www.shojihomu.co.jp/newbooks/1333.html

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