色を付ける
ある過払い金返還請求訴訟の口頭弁論を傍聴したときの話です。原告と、被告である貸金業者の担当者が出頭していました。裁判官は、原告の主張すべてに理由があるとの心証を持っているようです。
裁判官が、原告の請求に近い額で被告に和解を勧めたところ、被告はその半額しか払えないと回答し、交渉は決裂気味です。裁判官は、「終結して判決を出すことになりますよ」と念押しします。貸金業者の社員は「もう少し色を付けて、数万円なら上乗せできます」と答えました。
傍聴していた私は、この段階でダメだなと思いました。企業が顧客から余分なお金を取りすぎたことがわかったら、まず謝罪をし、その上で返金するのが普通の感覚です。ところがこの貸金業者の担当者は、それを半額に値切ったうえで、「色を付けて」上乗せする、と答えているのです。
自分が不利な立場の交渉の席上で、このような言葉を使ってしまったら、まとまる話もまとまりません。案の定、原告は態度を硬化させ「もう話合いには応じません。判決を出してください」と裁判官に申し出ました。この貸金業者の担当者は、自分がどういう立場に置かれているのか、さっぱり理解していなかったようです。

