パソコン遺言
ある小説を読んでいたら「遺言がパソコンのなかにあった」というくだりがありました。前後関係から自筆証書遺言のことだと思いますが、もしもそうだとすると、この遺言は法律的な効果は認められないことになります。自筆証書遺言は全文が自筆で作成されていることが必要だからです(民法968条)。
ただし、法的効力が無いとはいえ、そのパソコンのデータを通じて故人の遺志を相続人が知ることができる、という意味では貴重な存在です。遺言者の特定や改ざんなどが問題にならないような状況であれば、相続人らがそのメッセージを遺言と同じように取扱うことも、事実上はあり得ると思います。ちなみに、この小説ではそのメッセージが物語の重要な起点の一つになっています。
感動的な小説だけに、できるだけ作品世界をねじ曲げないよう、私なりに解釈してみました。