「先生」の二つの意味
「先生」という言葉の使われ方は、文脈によって大きく二とおりに分かれると思います。その人物の知識、経験、能力、才能などに敬意を表して「先生」と呼ぶ場合と、社会的な役割分担の確認のために「先生」と呼ぶ場合です。
前者の場合には、相手の努力や経験の蓄積に対する畏敬の念が根底にあります。「先生、弟子にしてください」というようなときです。いわば敬意表明型の「先生」です。後者は、何らかの専門的な能力を持った人に対して、その専門知識や技能の発揮を求めるときに使われる場合、たとえば患者が医師の診察を受けるような場合です。いわば役割確認型の「先生」です。
役割確認型の「先生」であっても、敬意を表するニュアンスが全くないわけではないと思います。しかし、どちらかといえばその専門能力を十分に発揮してくれることや、誠実な努力をしてくれることを期待する意味合いの方が強いように思います。
シチュエーションによっては、何らかの結果責任を負うべき立場を確認するためだけに、役割確認型の「先生」が使われることもあります。そういうときの「先生」という言葉には、丁重ではあるけれどもどこか冷い響きがあります。