民法423条の債権者代位による代位登記を申請した場合、申請人たる代位者には登記識別情報は通知されません。また、被代位者にも通知されません。不動産登記法21条に「その登記をすることによって申請人自らが登記名義人となる場合において」通知する、と規定されているからです。したがって、この登記完了後に、当該不動産に関して被代位者が登記義務者となる場合に、登記識別情報の提供が必要な登記手続をする場合には、事前通知もしくは本人確認情報の提供をせざるを得ないことになります。
これに対して、旧不動産登記法60条の2では「第46条の2(民法423条による代位登記)の場合に於て登記官が登記を完了したるときは前条第1項に掲げたる書類(登記済証)を債権者に還付し且登記済の旨を登記権利者に通知することを要す」とあり、登記済証自体は法務局から発行されていました。ただ、それは代位者に対して発行されるのであって、被代位者に対して発行されるわけではありません。そのため、被代位者が登記義務者となる登記手続をする場合には、その登記済証を利用することができません(登研122号)。たとえその登記済証を法務局に提出しても、何ら本人確認のための適格性がないからです。ちなみに、債権者代位による登記済証の適格性という問題は、かつて司法書士試験の書式の答練の引っかけによく使われていた論点です。
旧法に於いて登記済証が発行されていた登記手続だからといって、新法に於いて必ず識別情報も発行されるとは限らない、という代表的な例です。