古井戸/さなえちゃん
古井戸に「さなえちゃん」という有名な曲があります。古井戸は非常にシリアスな曲調の作品が多いバンドでしたが、これは例外的に軽快なテンポの作品です。
「さなえちゃん」が実在の人物で、その似顔絵を描いている情景をうたったものだと思って歌詞を追っていくと、突然サビの部分で、それが紙の上にだけ存在するキャラクターであって、ふとした不注意のために、もはや永久に再会することのできない存在となってしまったことが明らかになります。
この喪失感が曲の一番重要なモチーフになっていて、それはまるで実在の人物を失ってしまったような感傷として表現されています。この点に、曲の視点の非凡さが最もあらわれていると思います。奥底に誰かの不慮の死を歌ったような不吉さがあって、悪ふざけのように聞こえる曲調は、むしろその重苦しさを覆い隠そうとしているようにも感じられます。

