菅野沖彦さんの連載
著名なオーディオ評論家の菅野沖彦さんが,インターネットで「ピュアオーディオへの誘い」という連載を始めました。第一回目は主に音楽が抽象芸術であることと,それを再生するためのオーディオ機器というもののもつ特殊性について語っています。
ファイル・ウェブ「菅野沖彦 ピュアオーディオへの誘い」
http://www.phileweb.com/magazine/sugano/
菅野沖彦さんの語る内容を自分なりに解釈すれば,音楽を再生するためのオーディオ機器が普通の電化製品とどう違うのかということを切り口として,音楽そのものが持つ抽象性と,喚起される心象の普遍性についてまず説明し,それを再生する仕掛けが単なるメカとしての評価だけでは価値を把握しきれないものであると説明しているように思います。オーディオの本質を端的に述べた,とてもわかりやすい内容となっています。
この考え方は単にオーディオ機器だけについて当てはめて考えるのではなく,オーディオのセッティングや音の判断の仕方などがなぜ必要なのか,という理解をするうえでも重要な示唆をしているように思います。オーディオ機器というものは,置いて結線して音が出ればそれで終わり,というものではありません。単なるメカとして機器を評価するなら,それで目的達成となりますが,オーディオという趣味が,音楽を聴いたときの感動をさらに深めてゆくことを目指している以上,機器を含めた音楽再生の「仕掛け」全体を整える作業,つまり正しいセッティングや音の判断がどうしても必要になってきます。また,そういう使い方をして初めて本領を発揮するように作られているのがオーディオ機器というものです。
このように,いろいろ敷衍して考えることが出来るということは,やはり菅野沖彦さんの説明がオーディオという趣味の核心の部分を捉えたものだからではないか,と思います。