養子縁組前の子
被相続人Aに養子Bが居てその養子Bが被相続人Aより先に死亡していた場合に,養子縁組前に出生した養子の子Cは,養子Bを代襲してAを相続することができない,という関係になります。民法727条,809条,887条2項によるものです。
民法887条 被相続人の子は,相続人となる。
2 被相続人の子が,相続の開始以前に死亡したとき,又は第891条の規定
に該当し,若しくは廃除によって,その相続権を失ったときは,その者の
子がこれを代襲して相続人となる。ただし,被相続人の直系卑属でない者
は,この限りでない。
この点について,興味深い記事が月報司法書士平成18年12月号に掲載されています。立命館大学法学部本山敦教授の「縁組前の身分関係と縁組後の身分関係」と題する論考です。
記事ではいくつかの論点が指摘されていますが,その中で,昭和37年の民法改正前の代襲相続に関する条文では,被代襲者について「その者に直系卑属があるときは」と規定されていたことが,一つの問題としてあげられています。
相続登記の実務において,「養子縁組前の子は代襲相続人にならない」ということは基礎知識として馴染みの深いものですが,本山敦教授の解説によれば,改正前の条文においては文言上「養子縁組前の子が代襲相続人になる」と解釈することも可能であった,とのことです。ちなみに,現行法では「被相続人の直系卑属でない者は,この限りでない」として縁組前の子を除外していますから,そのように解する余地はありません。
現在の実務で常識と思っていることが,過去には解釈が確定的でなかったということはよくありますが,これもその一つといえそうです。相続関係に関わる部分でこのように解釈が未確定な問題があったというのは,当時の実務家にとってはさぞ頭の痛いことだったのではないかと思います。

