中間省略登記
甲→乙→丙の間で不動産が順次売買がされた場合の中間省略登記について,日本司法書士連合会は否定的な立場をとっています。この点,日司連発行の「月報司法書士」平成18年2月号に見解が示されています。その考え方の理論的根拠を要約すると,
1 わが国の不動産登記が現在の権利者の名義のみをでなく,
権利取得の過程をも公示するする機能を持っていること
2 わが国の不動産登記には公信力がないこと
3 不動産取引の前提としてその取得原因の真偽などの調査
する必要性があること
4 不動産登記法が「登記原因及びその日付」を登記事項と
するとともに,それを証明するものとして登記原因証明
情報を申請の際に原則として提供することを要求し,
利害関係人にそれを閲覧させることによって前記調査を
可能とすることを目指していること
(不動産登記法61条・121条)
となります。この見解では,登記が不動産取引のためのものであり,登記のために取引が阻害されることがあってはならないが,その取引はルールを守ったフェアなものでなくてはならないはずであり,少なくとも正直者が損をするようなものであってはならないはずである,とも述べられています。そして結論的には現在の不動産登記法のもとでは中間省略登記がルールを逸脱したものといわざるを得ず容認できない,としています。
日本司法書士連合会・登記制度対策本部不動産登記ワーキングチーム
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http://www.shiho-shoshi.or.jp/web/publish/geppou/200602/2006_02_049.html
ところが,内閣総理大臣の諮問機関である規制改革・民間開放推進会議が,上記の立場と正反対の結論を出しました。この答申では「本来中間省略登記は,不動産取引の現場の取引費用の低減ニーズに応え,また,不動産の流動化,土地の有効利用を促進するという社会的機能を持つものと考えられる」との立場から,中間省略登記を認めるべきとの提言をしています。
規制改革・民間開放推進会議公表資料
http://www.kisei-kaikaku.go.jp/publication/index.html
規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申(平成18年12月25日)・本文
http://www.kisei-kaikaku.go.jp/minutes/meeting/2006/10/item_1225_04.pdf
(第2部の6(3)③透明性が高く信頼される不動産市場の形成 p.54)
(第3部の11(2)登記制度の運用改善 p.174)
この提言では,p.174以下に記載の方法であれば中間省略登記が可能である旨,法務省にも確認済であると述べています。具体的には「第三者のためにする売買契約の売主から当該第三者への直接の所有権の移転登記」または「買主の地位を譲渡した場合における売主から買主の地位の譲受人への直接の所有権の移転登記」の方法が示されています。
なお,登記実務の機関誌である登記研究の最近のバックナンバーでは,691号(平成17年9月号)に,中間省略登記に関する記事が二つ掲載されています。
この件について,一般紙では下記の記事が出ています。
朝日新聞12月26日
http://www.asahi.com/housing/jutaku-s/JSN200612260003.html