司法書士田島掌のブログ

2006年09月13日

取締役会を廃止すると

取締役会設置会社が取締役会を廃止して,会社代表者をとくに定めなかった場合には,代表取締役でない取締役は各自が代表取締役になります(会社法349条1項,2項)。会社は代表取締役になった者について「代表権付与」を原因とする登記の申請義務を負うことになります。通常の株式会社の場合,取締役は氏名しか登記されませんが代表取締役は住所も登記事項です。したがって,いままで住所が登記されていなかった取締役に関しては,その住所を含めて会社から申請して貰わないと,法務局としては登記簿に記載しようがないし,原因年月日もわからないからです。

このような場合,

1 取締役会の廃止の定款変更決議
2 同時に代表取締役を互選により選定する旨の定款変更決議
3 直ちに取締役の互選により従前の代表取締役を代表取締役に選定
4 選定された代表取締役が就任承諾

という手続が同日でなされると,代表取締役でない取締役に関して「代表権付与」の登記申請は要しない,という取扱いがされることになります。理論的には1の決議成立の瞬間に代表権付与の効果が発生しますが,2で互選規定を置き,3で代表取締役を選定して4の就任承諾があれば,その段階で会社法349条1項にいう「代表取締役その他株式会社を代表する者を定めた場合」に該当することとなり,代表取締役に選定されなかった取締役は会社代表者ではなくなるからです。実体法上一瞬たりとも代表権付与の効果を発生させたくないのであれば,1,2の決議を同一の議案とし,その決議の効力発生の条件として3,4の事実を加えればいいのかもしれませんが,そこまでマニアックな手続は登記実務では要求されないと思われます。

また,再度選定された代表取締役についても,登記簿上の記載に変更がないということになるので,重任登記は要しないという取扱いがされることになります。会社としては役員変更登記をする必要がありません。これは商業登記の中間省略登記の新しい類型の一つといえるかもしれません。

ただし,株式の譲渡制限に関する規定が「取締役会の承認を要する」という文言の場合,同時に変更の登記申請が必要です。登録免許税は3万円(同ネ)です。

なお,取締役会廃止の登記申請の登録免許税は3万円です(登録免許税別表第一第24号ワ)。注意しなければならないのは,これは役員変更の登記と税区分が違うということです。役員変更は資本金の額が一億円以下の会社について1万円(同カ,一億円を超える会社は3万円)ですので,もしも取締役会廃止の登記申請と同時に取締役の就任または辞任を申請するのであれば,別途1万円(または3万円)が必要です。取締役会廃止が役員変更と別区分というのは,釈然としないものもありますが,現行法ではこうなります。

つまり,取締役会廃止,株式の譲渡制限の規定の変更をすると,登録免許税が6万円課税されるということです。さらに,役員変更を同時に申請すればプラス1万円(または3万円)で7万円(または10万円)となります。

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