司法書士田島掌のブログ

2006年08月21日

議事録の押印

登記の専門誌である「登記研究」701号に興味深い記事がありましたので,その概略をご紹介します。

会社法では,取締役会議事録について書面決議を新たに認めました(会社法370条)。取締役全員が書面等で同意の意思表示をしたときは実際に取締役会を開かなくても取締役会決議があったものとみなす,という規定を定款に定めることが可能になったのです。なお,監査役設置会社の場合は監査役の異議がなかったことも要件になります。

取締役が自分の会社と不動産の取引をするような場合,利益相反取引として,不動産登記手続には取締役会議事録が必要となります。通常,議事録には出席した取締役(及び監査役)が実印を押して印鑑証明書を添付します(会社法369条3項)。しかし,上記の書面決議をした場合は実際に出席した取締役がいない訳なので,だれが実印を押すのか,ということが問題となります。また,そもそも書面決議に関して議事録を作成すべきなのか,という問題もあります。

まず,議事録作成義務については会社法施行規則101条4項で定められています。そして,これを不動産登記の添付書面とするときは「議事録の作成にかかる職務を行なった取締役(会社法施行規則101条4項による記載事項)」がこれに実印を押して印鑑証明書を添付することになります。つまり,出席取締役(及び監査役)全員分の印鑑証明書までは要求されていないということです。

一方,会社代表者変更の商業登記を申請するときにも,取締役会議事録への実印押印と印鑑証明書が必要となる場合があります。この場合,取締役会が実際に開かれたときには,原則としてその議事録に実印を押印した取締役(及び監査役)の印鑑証明書を添付して登記申請をします(商業登記規則61条4項3号)。そして,取締役会を実際には開かず,書面で決議した場合であっても,その議事録には同意した取締役全員が記名押印しその印鑑証明書を添付して申請する必要があります。この点,上記の不動産登記の取扱いと異なります。このように,商業登記法の会社代表者変更手続では,従来の厳密な手続が維持されていることに注意が必要となります。

以上が概略です。なお,書面決議の場合の議事録作成者たる取締役は会社法上の署名義務者ではないものと思われます。会社法369条3項と会社法施行規則101条4項を比較すると,条文の定め方が異なるからです。あくまで不動産手続において要求される記名押印であることに注意が必要です(不動産登記令19条)。

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