司法書士田島掌のブログ

2006年04月06日

会社法と登記懈怠

会社の登記には,登記懈怠による過料というものがあります(商法498条1項1号)。5月から施行される会社法にも同様の条文があります(976条1号)。過料が科せられる典型的な例としては,株式会社で取締役の変更登記の申請を忘れていた場合があります。いまの商法では株式会社の取締役の任期は原則として2年です。したがって原則として2年ごとに取締役が変更(同じ人がもう一度就任する場合は重任といいます)されることとなり,そのときから2週間以内に登記の申請をする必要があるわけです。登記懈怠による過料というのは,この登記申請をしないままの状態が継続したときに科せられるものです。

ところで,先日会社法のビデオ研修に出席したときに,この任期と登記懈怠に関しておもしろいQ&Aがありました。会社法では取締役の任期を,ある条件のもとで,定款により例外的に10年まで伸ばすことのできる規定があります(332条2項)。そこで,既に取締役の任期が切れてしまっている会社が,会社法施行後に定款の任期の規定を変更し,任期を伸ばしてしまえば,登記懈怠にならないのではないか,という質問です。

講師の回答は,以下の通りでした。たしかに,整備法には「この法律の施行の際現に旧株式会社の取締役,監査役又は清算人である者の任期については,なお従前の例による」という規定(95条)があり,解釈上,会社法に基づく任期変更手続をした場合には,原則として変更後の任期規定が適用されるとされています。しかし,この適用を受けるには,「この法律の施行の際現に取締役である者」である必要があるため,既に任期の切れてしまった取締役については前提を欠いていることになります。

会社法や整備法が登記懈怠の救済措置を設けるはずはありませんので,当たり前といえば当たり前の話です。おもしろいQ&Aと書いたのは,内容が興味深いというよりも,その質問の発想の小ささがおもしろかった,という意味です。

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