「会社法には経過措置があるから何もしなくていい」?
会社法の施行に伴い,既存の会社に関する経過措置については,整備法(会社法の施行に伴う関係法律の整備に関する法律)に各種の定めが規定されています。会社法施行により,既存の会社において,直ちに不適法な状態が生じてしまうのを避けるためです。
ただし,これはあくまで不適法な状態をできるだけ避けるための手当に過ぎないことには,十分な注意が必要です。会社法には,会社の機関設計や種類株式あるいは情報開示の方法などについて多様な選択肢が用意されています。しかし,整備法は既存の会社がどのような選択すべきかという問いには,当たり前の話ですが答えてくれません。それぞれの会社がどのような株主(社員)構成で,どのような経営陣が,どのような事業展開あるいは事業承継を考えているかによって,とるべき選択肢は千差万別です。
したがって,会社法施行を機に既存の会社は,用意された多様な選択肢を検討して有効な選択をする会社と,何も検討しない会社に分かれていくこととなるでしょう。マーケットや取引先,あるいは銀行等がどちらの会社を評価するか,あるいはどちらの会社がより十分な危機管理体制を構築できるか,と考えざるを得ない状況となるわけです。