司法書士田島掌のブログ

2006年03月24日

国民生活センターの調査

独立行政法人国民生活センターから「多重債務問題の現状と対応に関する調査研究」という報告書が発表されました。多重債務の相談者585人について調査した結果をまとめたものだそうです。多重債務問題の実像を把握するうえで非常に貴重なデータです。

http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20060322_2.html

報告書の内容の一例を挙げると,消費者金融等から借り入れした人のうち,20.4%が一年未満で返済が行き詰まり,43.6%が4年以内に返済困難となっています。また,利息制限法の金利(15%−20%)の制限を知らなかった人は90.3%にものぼります。一般に消費者金融は25%−29.2%の高金利を貸付利率にしていますが,その前提として法が要求する要件を満たしている業者は事実上いないといってよく,最高裁判所もこのような利息制限法利率を超過した高金利取得の法的有効性を否定する判決をいくつも出しています。多重債務に苦しむほとんどの人たちは,法律上無効な高金利の部分まで支払を強いられ,6割以上の人たちが,4年以内に返済に行き詰まってしまう,という実情が浮かび上がります。

さらに報告書によれば,借金が生活に与えた影響として「自殺を考えた」が35.0%で最も多く,ついで「ストレスから病気になった」30.4%,「家族の別居や離婚など家庭崩壊を招いた」が22.6%,「蒸発を考えた」20.7%などの回答があがっています。多重債務問題が市民生活に深刻な影響を与え,それが社会的にも大きな損失となっていることがわかります。

この報告書には,上記の他にも注目すべき多角的なデータが多数掲載されています。そして最後に提言として「借り手の返済能力を超える過剰融資の防止」「グレーゾーンの廃止と上限金利の利息制限法金利への統一」「債務に関する消費者教育の充実」を主張しています。これらの主張は,多重債務問題に取り組む弁護士や司法書士,市民団体等が主張してきたものとも一致します。今回の報告書のように客観的裏付けのあるデータの調査と分析の結果から,このような結論が導かれた意義は非常に大きく,高金利引き下げを求める運動にもいっそうの弾みをつけるものと期待されます。

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