最高裁からのメッセージ
最高裁が貸金業の金利問題で,また注目判決を出しました。高等裁判所で貸金業者主張の高利が認められてしまった終局判決を,最高裁が破棄して差し戻したものです。
判決文で最高裁は,「高等裁判所が上告審としてした終局判決に対して最高裁判所に更に上告をすることが許されるのは,民訴法327条1項所定の場合に限られるところ,本件上告理由は,違憲をいうが,その実質は単なる法令違反を主張するものであって,同項に規定する事由に該当しない」としながらも,「原々審及び原審の判断には,いずれも判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。したがって,原判決及び原々判決を破棄し,本件を原々審に差し戻すこととする」と述べています。内容的には,利息制限法の利率を超過した高金利を例外的に認めてしまった高裁の判断に,最高裁が待ったをかけた形となるものです。
最高裁のこの上告受理は「極めて異例」といわれています。なぜなら,この裁判は簡易裁判所で提起され,上級審へ上告されてきたものですが,高裁の終局判決が出た段階で,三審制をとる民事訴訟の原則から,通常はそれ以上の上級審である最高裁への上告はみとめられないからです。
「『灰色金利』無効,特例で特別上告 最高裁が判決」朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/0318/TKY200603170403.html
しかも,最高裁は上告人の申立理由を認めなかったにもかかわらず,高裁の判断に「明らかな法令違反がある」と指摘して,職権で破棄自判してしまったわけです。これは,例外的な高利を認めず利息制限法の利率を徹底せよ,という最高裁からの強いメッセージを感じさせるものです。