朝日新聞は,平成18年3月12日付の社説で「高金利融資 グレーゾーンの一掃を」と題し,貸金業者に関する二つの法律,すなわち利息制限法と出資法の矛盾を解消するよう,主張しました。
http://www.asahi.com/paper/editorial20060312.html
利息制限法は,年間15%から20%を上限金利と定め,これを超える利息の契約につき超過部分を無効としていますが,出資法は貸金業者が年間29.2%を超えた利率を定める契約をしたときに,刑罰を科しています。つまり,20%を超え,29.2%以下の範囲の利率は「法律上無効だけれども刑罰の対象にはならない」という利率であり,これが「グレーゾーン」と呼ばれる理由です。グレーゾーンの利率で貸付をしている貸金業者は,従来,利息制限法の制限利率を超過する利息支払いの有効性の根拠として,貸金業規制法第43条のいわゆる「みなし弁済」規定の適用があることを主張してきました。しかし,最高裁判所は平成18年1月13日,貸金業者一般の取引に関するこの規定の適用の可能性を,事実上否定するに等しい判決を下しました。
朝日新聞の社説は,このような背景から,出資法の上限利率を,利息制限法の水準まで下げ,グレーゾーンの廃止を主張しています。さらに注目されるのは,利息制限法の制限利率そのものも,将来的に引き下げを検討すべき,と主張している点です。
実はこのような主張は,多重債務問題に取り組む法律家や市民団体の間から,何年にもわたって主張されてきたものです。それがここへきてクローズアップされてきたのは,出資法の上限金利の見直しが平成19年1月に迫ってきたからです。貸金業界は,上限金利の規制緩和や「みなし弁済」規定の適用要件の緩和を主張していますが,多重債務問題に取り組む法律家や市民団体は利息制限法の利率適用の徹底や「みなし弁済」規定の廃止を求めています。去る平成18年3月4日には,全国から東京に600名近い法律家や市民団体が集まり,高金利の引き下げを求める集会とデモ行進をおこないました。
私もこの集会に参加してきましたが,集会は大成功といってよく,高金利引き下げを求める運動の盛り上がりを実感しました。マスコミは,一部を除いてこの問題を広く取り上げてきたとは言いがたい状況でしたが,中日新聞・東京新聞は平成18年3月6日付社説でいち早くこの問題を取り上げ,金利引き下げを主張しています。
http://www.chunichi.co.jp/00/sha/20060306/col_____sha_____001.shtml
今回,朝日新聞の社説でも金利引き下げの主張がはっきり打ち出されたこととなり,平成19年1月の出資法上限金利の見直しの議論に対して,無視できない影響を与えるものと思われます。